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第100話 冬の季節

last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-26 18:11:32

 北の土地に到着した時点でイーヴァルと別れて、開拓村の場所を決める。

 村の場所は平原に流れる川の北側にした。

 橋をかける手間があるが、将来的にパルティアといざこざがあった際は川を天然の守りや境界線にできる。

 当面は小さな馬車しか通る予定がないので、簡易的な橋にしておいた。

 秋のうちから始まった開拓村作りだったが、素人が多いせいでどうにもはかどらなかった。

 敷地の地ならしから始めて家を建てる。王都で雇った数人の大工、それに大工スキル持ちの奴隷が頑張ってくれたが、やはり進みは遅い。

 家の建設と同時に気をつけたのはトイレだ。

 しっかりと深くトイレ用の穴を掘って汲み取り式にした。

 汲み取った汚物はいずれ肥溜めで肥料にしたいと考えているが、冬の間は凍るから無理。村から離れた場所に埋めるだけだ。

 トイレを放置すると病気の原因になりやすい。ここは譲れなかった。

 橋ができ、三、四軒の家と家畜小屋が建つ頃には、ちらほらと雪が振り始める季節になっていた。

 いよいよ雪が積もる前にようやくもう三軒ほどの家ができあがる。

 ここで王都の大工は帰ってしまった。

「さすがにこんな寒い場所で冬は越せねえよ。また春になったらよろしくな」

 そう言って、パルティアから運んできた物資の馬車に便乗する形で帰っていった。

 まあ、もともとそういう契約だから仕方ないな。

 ようやっと全員が家で眠れる程度の広さである。

 そんなに立派なものではなく、俺を含めて雑魚寝状態だ。すし詰めとも言う。

 雪の民が狩猟で獲った毛皮をわけてくれたので、布団のようにくるまって眠った。とても暖かい。

 ついでにクマ吾郎を湯たんぽにして寝た。奴隷たちもクマ吾郎にくっついている。大人気の熊である。

 やがてすっかり雪が地面を覆ってしまうと、できることは少なくなる。

 冬の森に入って枝を拾い、薪にしたり。

 その他は家事全般。煮炊きやら掃除洗濯やら。

 あとは家畜の手入れくらいか。女性だけでも回る程度の仕事量だ。

 パルティアからの物資

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